『人物叢書』(新装版)刊行のことば

人物叢書は、個人が埋没された歴史書が盛行した時代に、「歴史を動かすものは人間である。

個人の伝記が明らかにされないで、歴史の叙述は完全であり得ない」という信念のもとに、
専門学者に執筆を依頼し、日本歴史学会が編集し、吉川弘文館が刊行した一大伝記集である。

幸いに読書界の支持を得て、百冊刊行の折には菊池寛賞を授けられる栄誉に浴した。

しかし刊行以来すでに四半世紀を経過し、長期品切れ本が増加し、読書界の要望にそい得ない状態にもなったので、この際既刊本の体裁を一新して再編集し、定期的に配本できるような方策をとることにした。

既刊本は一八四冊であるが、まだ未刊である重要人物の伝記についても鋭意刊行を進める方針であり、
その体裁も新形式をとることとした。

こうして刊行当初の精神に思いを致し、人物叢書を蘇らせようとするのが、今回の企図である。
大方のご支援を得ることができれば幸せである。

昭和六十年五月

日 本 歴 史 学 会 代表者 坂 本 太 郎

吉 川 弘 文 館 刊 行

 

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